
数えきれないほどの映画やドラマを観てきた。
オリンピックやワールドカップを観るのも、そこに自分を感動させてくれるストーリーがあるからだ。
青春時代は、ジョン・レノンやモハメド・アリを観て育った。
結局、彼らの残したストーリーを求めていたのだと思う。そうやって若者は自分の生き方を描くのだ。
人間の頭脳は、論理を理解することではなくストーリーを把握することに向いている、と指摘したのは認知心理学者のロジャー・シャンクだった。
我々は、水や食物を必要とするように、ストーリーを渇望している。
政治・外交・ビジネスのあらゆるシーンで、人心を掴むことのできる効果的なストーリーを採用することに成功したチームが勝利に近づくことができるだろう。
前回のアメリカ大統領選挙に勝利したバラク・オバマ氏が、ソーシャルネットワークを戦略的に活用したことは有名な話だ。
同時に、"チェンジ"をキーワードとするストーリーの力を利用して、YouTubeやブログを使ってキャンペーンを繰り返すことで、勝利を手繰り寄せたとも推測できる。
それだけ、我々は現状を打開してくれるストーリーを求めている。
別の見方をすると、様々なシーンで各陣営の描くストーリー同志が、勢力分布図の拡大をかけた戦いを繰り広げているとも言えるだろう。
60年代・70年代のアメリカには、マルコムX、マーチン・ルーサー・キング、モハメド・アリといった黒人解放運動の旗手たちがいたが、その中でアリの提供したストーリーが最も輝きを放っていた。
異国の地に住む我々も、アリの描く夢と戦いに感情移入した。
ボクシングという戦いを通して、自らの主張を民衆に分かりやすく伝えるという表現スタイルが多くの支持を集めたのだ。
あの"キンシャサの奇跡"と呼ばれたザイールの一戦も、アリの周到に準備してきたストーリーの勝利だったという見方もできる。
ストーリーの秘める力は計り知れない。誰もがそのことを薄々とでも感じている。
特に閉塞感のある時代には、強力なリーダーシップと共に、ダイナミックで普遍性のあるストーリーが待望されている。
そんな強烈なストーリーを引っ提げて現れた誰かが、時代を一新させる可能性も考えられる。
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